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Calculating...

えーっと、今日はね、第9章について、ちょっとお話していこうかなー、なんて思ってます。

あの、老子の言葉でね、「もし方向を変えなければ、あなたは今向かっている場所にたどり着くでしょう」っていうのがあるじゃないですか。あれ、本当にそうだなーって思うんですよね。

紀元前3世紀の話なんですけど、ピュロスっていう、エピロスっていうギリシャの小さい国の王様がいたんですよ。アレクサンダー大王のいとこらしいんですけどね。まあ、その人が、結構、軍事的に強くて、戦略も上手いって評判だったみたいで。紀元前280年くらいには、ギリシャ半島で、あちこち戦争して、勢力を拡大してたんですって。

でもね、その軍事的な運命も、ずっと続くわけじゃなかったんですね。

その頃、ピュロス王は、タレントゥムっていう、南イタリアの都市国家から、ローマ共和国と戦ってるから助けてくれっていう依頼を受けたんです。タレントゥムは、直接の同盟国じゃなかったんだけど、ピュロス王は、ローマ共和国がどんどん強くなっていくと、自分の国も危ないって思ったんですね。「敵の敵は味方」っていう発想で、自分の強い軍隊を率いて、南イタリアに渡って、ローマ軍を打ち破ろうとしたんですよ。

で、ヘラクレアっていう町の近くの平原で戦いが始まったんだけど、最初は、ピュロス王の軍隊が圧倒的に強くて、ローマ軍は、ボロボロだったみたい。ローマの将軍たちも、タレントゥムなんて簡単に倒せると思ってたみたいだし。

でもね、ローマ軍も負けじと反撃して、何日も激しい戦いが続いたんです。結局、ピュロス王は勝利宣言できたんだけど、ものすごい犠牲を払ったんですね。優秀な兵士がたくさん死んで、一番頼りにしてた将軍まで失っちゃった。

それでもね、ピュロス王は、南イタリアに自分の勢力を広げたいと思って、もう一度、アスクルムっていう町の近くで、ローマ軍と戦ったんです。

またしても、ピュロス王は勝利したんだけど、やっぱり、何日も苦しい戦いが続いて、軍隊は、体力的にも精神的にも、ズタボロになっちゃったんですって。その戦いの後で、ピュロス王は、「こんな勝利をもう一度繰り返したら、我々は滅んでしまう!」って言ったらしいんですよ。結局、ピュロス王は、イタリアから撤退して、自分の国に帰って、その後は、たいした戦いもせずに、5年後にひっそりと戦死しちゃったんです。

でもね、ピュロス王の功績は、完全に無駄になったわけじゃないんですよ。彼は、自分の名前を後世に残したいと思って、ローマとの戦いに挑んだんだけど、結果的には、ちょっと違う形で、名前が残ることになったんです。

「ピュロスの勝利」っていう言葉があるじゃないですか。あれは、勝利したんだけど、犠牲が大きすぎて、まるで負けたような気分になるっていう意味なんですよね。勝利が、勝利者を壊してしまう。戦いには勝ったけど、戦争には負けた、みたいな。

これ、ただの歴史の授業じゃないんですよ。これ、すごく大事なことなんです。「ピュロスの勝利」は、自分の人生で絶対に避けなきゃいけないものなんです。そして、残念ながら、もしあなたが方向を変えなければ、「ピュロスの勝利」に向かっているかもしれない。

なぜなら、あなたは、間違ったものを測っているから。

お金。

何かを評価する基準が、明確な目標になってしまうと、人は、そればかりを優先してしまうんです。たとえ、それが、他のことに悪い影響を与えるとしてもね。お金っていう、たった一つの基準にばかり注目して、他の大切なものを犠牲にしてしまうんです。昇進したり、給料が上がったり、ボーナスが出たりすると、嬉しいんだけど、本当は、もっと大切なものが、自分の指の間から、ゆっくりとこぼれ落ちているのに、気づかないんです。お金が、ただの評価基準じゃなくて、明確な目標になってしまっているんですね。

私たちが戦っている戦争は、幸せとか、充実感とか、愛する人との関係とか、生きがいとか、成長とか、健康とか、そういうもののためのはずなんです。もし、あなたが戦っている戦いが、お金のためだけだとしたら、個々の戦いには勝てるかもしれないけど、戦争には負けてしまうでしょう。

ピュロス王のように、命を落とすようなことはないかもしれないけど、危険な兆候はたくさんあります。

例えば、四半期の利益目標は達成したけど、結婚記念日を忘れてしまった、とか。ボーナスは過去最高額だったけど、子供の運動会に一度も行けなかった、とか。仕事の電話には、いつも対応してるけど、昔からの友達と連絡を取る時間がない、とか。安定のために、今の仕事を続けてるけど、本当にやりたいことを諦めてしまっている、とか。週に5回もクライアントと食事に行ってるけど、階段を上るだけで息切れしてしまう、とか。お金になることは絶対に逃さないけど、心の平穏を失うことには、何も感じない、とか。

もし、あなたが、お金のことばかり考えて、突っ走ってしまうと、「ピュロスの勝利」が待っているでしょう。

だから、新しい評価基準が必要なんです。

それが、五つの富。

時間の富

人間関係の富

精神的な富

肉体的な富

経済的な富

今までの評価基準は、経済的な富だけだったけど、これからは、人生を本当に豊かにするための、様々な要素を評価するんです。五つの富があれば、何かを手に入れるために、ずっと待ち続ける必要はありません。幸せとか、充実感とかは、ゴールじゃなくて、旅そのものに組み込まれているんです。ゴールにたどり着くのを待たなくても、毎日、ゴールにたどり着いたような気分でいられるんです。

この新しい評価基準は、3つの点で、今までのものよりも優れています。

測定:幸せで充実した人生を送るために必要な、すべての要素を評価に組み込むことで、適切な行動を取れるようになります。正しいものを測れば、正しい行動を取れる。戦争全体を意識していれば、個々の戦いに夢中になって、全体を見失うことはありません。

決断:人生における、大小様々な決断を評価するための、新しい視点を与えてくれます。経済的な富だけにとらわれるのではなく、五つの富すべてに、どのような影響を与えるかを考えて、決断することができるようになります。今までの評価基準では、経済的な富を減らすような決断は、怖いものだったけど、新しい評価基準では、他の富を増やすことができるなら、ワクワクする決断になるかもしれません。

計画:長期的な目標を見据えながら、人生の様々な時期に合わせて、優先順位を変えていくことができるようになります。具体的な戦いに集中しながらも、長期的な戦争で勝利するための、明確さをもたらしてくれます。何を優先するために、何を犠牲にするのか、それを明確にすることができます。

五つの富は、それぞれが大切だけど、それらの関係性、つまり、相互作用と優先順位付けが、人生を総合的に豊かにするために、とても重要なんです。

時間の富っていうのは、自分の時間を、誰と、どこで、どのように使うかを自由に選べることなんです。時間っていうものが、どれだけ貴重な資産であるかを理解し、感謝すること。集中して、最も効果的な活動に、時間を使える能力のことです。自分の時間をコントロールして、優先順位を決められること。イエスかノーかを、自分で決められること。時間の富がない人生を送っていると、いつも時間に追われて、ただ忙しいだけで、何も進んでいないような状態になってしまいます。

人間関係の富は、個人的な関係と、仕事上の関係の両方における、人との繋がりです。愛と友情を分かち合える、頼りになる人たちのネットワークのことです。他の富を味わうための、土台となるものです。誰と一緒に過ごす人がいなければ、自由に時間を使えても、意味がないですよね。愛する人と一緒に楽しむことができなければ、健康な体も、意味がないですよね。誰かに何かをしてあげることができなければ、お金があっても、満足できないですよね。人間関係の富は、深くて、意味のある、健全な関係と、コミュニティや文化の中で、充実した浅い繋がりの両方によって定義されます。人間関係の富がない人生を送っていると、地位や名誉ばかりを気にして、永続的な満足感と喜びを与えてくれる、大切な関係を築くことができません。

精神的な富は、人生の目的や意味と繋がることです。それが、モチベーションを高め、短期的な決断と長期的な決断の両方を導いてくれます。知性、能力、人格を成長させようと努力し、生涯にわたって学び続けることです。心との関係を良好に保ち、人生における、大きな問いと向き合う時間を作り、静けさ、バランス、明晰さ、再生を促すための習慣を維持することです。精神的な富がない人生を送っていると、停滞し、可能性を狭め、目的意識が低く、ストレスを感じ続けることになります。

肉体的な富は、健康、体力、活力のことです。自然界に基づいているため、他の富よりも、自然に劣化しやすいという特徴があります。肉体的な富は、運動、栄養、休息など、自分でコントロールできる行動に焦点を当て、活力を高めるための習慣を作ることによって定義されます。肉体的な富がない人生を送っていると、健康的な習慣を維持することができず、加齢による肉体の衰えに翻弄され、人生の後半を楽しめなくなってしまいます。

経済的な富は、一般的に、資産から負債を引いた金額、つまり、純資産として定義されます。しかし、新しい評価基準では、さらに、必要なものの期待値、つまり、「十分」の定義も考慮に入れます。もし、あなたの期待値が、資産よりも速く上がってしまうと、あなたは、本当の経済的な富を得ることはできません。なぜなら、あなたは、いつも、もっと多くを必要とするからです。経済的な富は、収入を増やし、支出を管理し、長期的な資産に投資することによって築かれます。経済的な富がない人生を送っていると、収入と支出がいつも同じで、終わりのない競争を続けることになります。

この五つの富があれば、あなたは、戦いにも戦争にも勝つことができるでしょう。

人生の四季

「道を行き始めると、道が現れる」っていうルーミーの言葉があるじゃないですか。

五つの富は、人生の四季を通じて、あなたが成長できるように設計されています。ただし、成長っていうのは、完璧なバランスと幸福を手に入れることではありません。成長っていうのは、情報と行動のことです。それぞれの富の役割を理解し、それを改善するための方法を考え、長期的な価値観と目標に沿って、適切な行動を取ることです。

成長は、最終的な状態ではなく、継続的な旅なんです。

あなたの人生は、一本の直線ではありません。それは、満ち引きを繰り返し、四季があるように、様々な時期があるんです。それぞれの時期には、異なる欲求、必要性、優先順位、課題があります。それぞれの季節のいいところも悪いところも、受け入れなければなりません。今の季節を受け入れ、その不完全さと可能性を受け入れ、長期的な視点でバランスを考えることによって、成長することができるんです。

20代で基盤を築くためのアプローチは、30代で成長し、40代で家族を築き、50代で生きがいを見つけ、60代以降で引退生活を送るためのアプローチとは違うかもしれません。同様に、晩年のアプローチが、若い頃には通用しないこともあります。この旅には、決まったガイドはありません。誰の季節も、誰のバランスも、唯一無二のものです。変化、失敗、学習、成長、適応に、決まったタイムラインはありません。義務もなければ、正解も不正解もありません。

あなたは、仕事で成長する時期、離婚する時期、家族の悲劇の後に再調整する時期、内面の健康を追求する時期、新しい恋をする時期を経験するかもしれません。五つの富は、人生の大きな成功と、困難な時期の両方で、あなたを導いてくれます。それは、現在の季節の戦いという、ミクロな視点と、複数シーズンの戦争という、マクロな視点の両方で価値を提供する、普遍的な考え方です。

痛み、どん底、悲劇、終焉を経験したとき、暗闇の中から光が差し込むことがあります。その光は、物事の反対側を見たときに得られる、圧倒的な洞察、つまり、アハ体験です。私の古い友人が、「両親に会えるのは、あと15回しかない」と言ったときに見た光です。年老いた男が、人生で情熱を追求しなかったことを後悔した時に見た光です。子供が、もうベッドに寝かしつけられたくないと言ったときに、親が見る光です。死にかけている女性が、オフィスで残業した夜のことを覚えているのは、子供だけだと気づいた時に見る光です。

それは、あなたが、決して見たくないと思う光であり、いつか必ず見ることになる光であり、今すぐに見る必要がある光です。

あなたは、その光が存在することを知っています。どんなものかさえ知っています。あなたは、その話を聞いて、教訓にうなずいて、まったく同じように生き続けます。

しかし、その光を無視することは、暗闇の中で生きることです。

あなたは、その光に基づいて行動し、それがあなたの人生にもたらすものを、受け入れる必要があります。

五つの富は、あなたの人生を測るための、新しい方法なんです。なぜなら、正しいものを測れば、正しい行動を取り、最良の結果を生み出すことができるからです。

旅は始まったばかりです。反対側からの光を、道に照らしてください。

さあ、歩き始めましょう。

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