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ええと、今回は、なんだっけ、第21章について、ちょっとお話してみようかな、と。ええとね、章のタイトルは、「情報過多による軋み」みたいな感じかな。
マクルーハンっていう人が言った言葉で始まるんだけど、「あらゆる意味は加速とともに変化する。なぜなら、個人と政治の相互依存のパターンは、情報の加速とともに変化するからだ」って。深いよね。
で、まあ、この100年くらいで、情報の伝達速度が、もう信じられないくらい速くなったんだよね。で、コストもほぼゼロになった、と。今じゃ、外を見るより、アプリで雨が降ってるかどうか聞いた方が早かったりするじゃない?本当にそんな感じ。
知識労働の現場では、常に脳が処理している情報の量が、その人のギアを決めるんだって。大量のデータを処理しなきゃいけないと、脳は対応するためにギアを上げる、と。
1880年には、アメリカで電報が一年で3300万通以上送られたんだって。で、2023年には、アメリカだけで一日に100億通以上のメールがインターネットで送られているらしいんだよね。電報は一対一だけど、メールは一度に何千、何百万もの人に届く可能性があるから、もう全然違うよね。
今は、人類が持っているすべてのデータが、インターネットっていう分散型のネットワークに集約されて、「スーパーライブラリー」みたいなものになってるんだよね。キーボードをちょっと叩くだけで、どんなに取るに足らないデジタルデータでも、そのスーパーライブラリーの棚に置かれちゃう、と。コレクションはもう無限に多様で、百科事典みたいな「伝統的な」知識から、全然関係ない情報まであるんだよね。例えば、香港のハリウッドロードを歩いている人が、ルクセンブルク市のクロッシュドール公園でバレーボールが迷子になったことを知る、みたいな(笑)。インターネットに接続できる人なら誰でも、この巨大な図書館のコンテンツに、一瞬で、しかもほとんどお金をかけずにアクセスできる、と。
でも、この情報伝達の急増は、3つの問題を引き起こしてるんだよね。情報の量が多すぎること、情報の質が低いこと、そして、それに対処するための注意力が足りないこと、この3つ。
情報伝達が安くなると、情報の質は犠牲になって、量が増えちゃうんだよね。で、情報の量が増えるほど、必要な情報にアクセスする能力が低下する、と。グーグルで検索すると、答えが長くて回りくどくて、関連性や質もバラバラなリンクが、無限に出てくるじゃない?ChatGPTみたいな最先端のAIチャットボットでさえ、インターネット上の膨大な情報で学習してるから、一番普及している情報を提供するだけで、一番関連性の高い情報を提供してくれるとは限らないんだよね。
関連のある情報と、そうでない情報を区別するには、不要な情報も処理する必要があるから、脳のリソースが圧迫されちゃうんだよね。脳が「ギシギシ」軋む、みたいな。
そこで、「負荷を軽減する」っていう話になるんだけど。1980年代に、研究者たちが、ワーキングメモリーっていう、一時的に情報を保存する場所と、長期記憶っていう、すでに頭の中にある知識が、どう相互作用するかを調べたんだよね。これが、認知負荷理論につながった、と。新しい情報に触れると、ワーキングメモリーに一時的に保持して、徐々に長期記憶に移動させるんだって。で、このワーキングメモリーの容量には限りがあるんだよね。大量の情報でワーキングメモリーが圧迫されると、記憶しにくくなるだけでなく、注意したり、学習したり、問題を解決したり、新しいアイデアを生み出したりすることも難しくなるんだよね。ワーキングメモリーがいっぱいになると、脳の機能全体が停止しちゃう、と。
認知負荷理論の研究者たちは、情報の処理、整理、消費の方法を調整することで、ワーキングメモリーの負荷を軽減する方法をいくつか見つけたんだって。
まず、「冗長性を排除する」っていうこと。情報を処理するために脳がしなければいけない作業を最小限にするように、情報を整理するんだって。例えば、会社の生産量のグラフが画面の半分に表示されていて、補足情報がもう半分に表示されている場合、脳はそれらを統合するっていう余分なステップを踏まなきゃいけないんだよね。情報を処理する前に統合しておけば、脳の負担は減る、と。ノートとペンを使って情報を整理するのも、頭の中で整理するより負荷が少ないよね。つまり、覚えようとするよりも、書き出す方が楽、と。この戦略は、一度に脳に提示する情報の量にも当てはまるんだって。プレゼンテーションを見ているとき、各スライドに写真と説明文の両方が含まれている場合、脳は同じ情報を二度処理するために労力を費やしていることになるんだって。しかも、それぞれの情報が同じ内容を伝えていることに気づくためには、さらに労力が必要になる、と。
次に、「交通量を減らす」っていうこと。消費する情報がたくさんある場合は、さまざまなメディアに分散させることで、脳の負荷を軽減できるんだって。例えば、試験勉強をしているなら、講義の録音を聞く時間と、ノートを読む時間を半分ずつにしたり、長い本を読んでいるなら、ハードカバー版とオーディオ版を交互に切り替えたりする、と。
ある大手航空会社の副操縦士のCDさんっていう人が、ボーイング777を操縦する方が、自動操縦システムに大きく依存している他の飛行機よりも好きだって言ってたんだって。自動操縦システムは、パイロットの精神的な負荷を軽減するんだけど、ほとんどの場合、情報のためにフライトとナビゲーションのディスプレイに頼らなければならないのは、視覚的な注意力を酷使することになるって。777は、操縦桿、ゴム製のペダル、スラストレバーなどの機能がまだ残っていて、ディスプレイに頼らなくても、航空機が何をしているか(ピッチとロール、ヨー、スラスト)を物理的に「感じる」ことができるから、CDさんは777の操縦が好きだって。この分散型の処理方法のおかげで、精神的な負担が軽減されるんだって。
それから、「テクスチャと多様性を加える」っていうこと。ワーキングメモリーは、新しい情報を一時的に保管しておく場所で、長期記憶の中に場所が見つかるまで、そこにあるんだよね。新しい情報を、すでに知っていることや経験と結びつけることができれば、それを保管しやすくなるんだって。情報が多様で、テクスチャが豊富であるほど、すでに知っていることと共鳴する要素が含まれている可能性が高くなり、ワーキングメモリーのスペースを解放できる、と。物語として提示された方が、事実のリストとして提示されたよりも、何かを学びやすいのは、このためなんだって。ストーリーはすでに要素を結び付けているから、保管しやすいんだよね。
最後に、「目標を緩める」っていうこと。精神的な負荷を軽減する方法の一つは、取り組んでいる目標を、それほど厳格に感じさせないことなんだって。例えば、複雑な問題を解決するとき、脳は常に現在地と最終的に到達したい場所を比較しているんだよね。これが、貴重なワーキングメモリーのスペースを占有するんだって。よりシンプルで、厳格でない目標にすると、ディスクスペースが解放される、と。
次の2つの問題を考えてみて。どっちの方が精神的に負担を感じる?
1. 車の速度が時速2キロで、1分前には完全に停止していた場合、どれくらいの距離を移動しましたか?
2. 車の速度は現在時速2キロです。1分前には停止していました。これらの2つの事実から、できるだけ多くの情報を探してください。
最初のシナリオでは、ワーキングメモリーは目標を同時に記憶し、数学的な計算を実行する必要があるよね。2番目の例では、ワーキングメモリーは目標を記憶する必要がないから、計算に利用できるスペースが多くなる、と。どちらのアプローチでも答えは出るけど、2番目の質問の方が簡単に感じるはず、と。
この原則は、大量の情報を学習する場合にも当てはまるんだって。ある実験で、バーチャル美術館をコンピューターゲームで探索するときに、半分の人は美術品泥棒になりきって、もう半分の人は美術品泥棒を計画しているつもりになったんだって。泥棒を計画していた人たちは、目標(最も高価な絵を手に入れること)を常に念頭に置いておく必要がないから、美術館を探索することができて、次の日により多くの絵を覚えていたんだって。
で、次は、「ノイズをふるいにかけて、信号を得る」っていう話。情報の量が増えて、質が犠牲になると、情報を受け取る人がそれを必要としているかどうか、理解しているかどうか、正確さを確認できるかどうかに関わらず、情報を伝えること自体が目標になっちゃうんだよね。質問者の質問を解析して、具体的に求めている情報を把握するよりも、あるトピックに関するすべての情報をメールで送る方が簡単なんだよね。これによって、必要な情報にたどり着くために、不必要な情報を探し回る必要が生じて、負担が増えちゃう、と。
1986年に、リチャード・ダフトとロバート・レンゲルっていう研究者が、複雑なメッセージを理解してもらうためには、コミュニケーションチャネルの種類によって、最適なチャネルが異なる、っていう理論(メディア・リッチネス理論)を提唱したんだって。不確実性や誤解のリスクが高いほど、「リッチ」なチャネルを選択するべきなんだって。対面コミュニケーションは、「リッチネス」が高いんだよね。情報を送る人は、相手の理解のギャップを修正したり、身振り手振り、表情、その他の非言語的な手がかりを使って、曖昧さをすぐに解消できるから。伝えられている情報が完全に理解されていない場合、または誤解されている場合は、受信者と送信者の両方が、空白を埋めるために特別な努力をしなければいけないんだよね。情報の質を向上させることで、脳への負担を軽減できる、と。
多国籍企業で成功しているチームを管理しているPBさんの例を挙げて説明するね。PBさんは、正確な回答が必要な複雑な問い合わせが、対面式の会議で話し合う代わりに、メールで送信されることが増えていることに気づいたんだって。これらのメールは、曖昧で不明確な言葉遣いで書かれていることが多くて、受信者は何を求められているのかを理解するのに苦労するんだよね。あらゆる事態を想定して、余分で曖昧な情報を返信するんだけど、そのほとんどは無関係なんだよね。メールの送信者は、返信に困惑するけど、それを認めるのが恥ずかしいから、問い合わせは未解決のままになり、将来的にさらに大きな問題につながるんだって。その間に、混乱、不確実性、追加の作業によって、すべての関係者の精神的な負荷が増加する、と。
メールは、すでに疲弊している読者が、干し草の中から針を探すような気力がないために、読まれずに放置されることが多いんだって。メールの重要なコンテンツは、長々とした文章の中に埋もれてしまって、読者の目に留まらないことがあるんだよね。これが不当なフラストレーションを引き起こし、リソースを浪費し、フォローアップして返信を追いかけるプロセスが、さらに負担を増大させる、と。
で、次に、「意思決定」の話。質の低い情報のせいで、良い意思決定をすることが難しくなるんだよね。
意思決定は、法廷での出来事に似た3段階のプロセスなんだって。証拠を集めて、脳がその証拠について熟考して、判決が下される、と。
意思決定の質は、最終的には証拠の質に依存するんだって。偏見を持たず、焦らずに証拠を集めれば、より信頼性の高い証拠になる、と。十分な証拠を集めたら、それを検討して、探求して、点と点をつなぎ合わせて、批判的に考える必要があるんだよね。この熟考段階では、広い注意のフィールドと狭い注意のフィールドを往復する必要があるから、広く網を張ってから、信号に絞り込むんだって。ギア2の状態は、これらすべてを満たしているんだよね。
意思決定にかける時間が短いほど、このプロセスは短縮され、証拠収集の段階が最も削られやすいんだって。十分な証拠がないと、脳はすでに持っている知識と、抱いている偏見を使って、判断を下す可能性が高くなる、と。ギア3の状態もこのプロセスを短縮して、偏った意思決定や即断につながるんだよね。時には、悲惨な結果をもたらすこともある、と。
アンフェタミンなどの強力な興奮剤は、ユーザーを簡単にギア3の状態に追い込む可能性があるんだって。2003年初頭、アフガニスタンで、米空軍のパイロット2人が、誤ってカナダ兵を爆撃した事件に関連して、軍事公聴会が開かれたんだって。NPRの報道によると、パイロット(弁護士を通じて)は、自分たちの判断が、服用していた興奮剤によって歪められたと主張したんだって。報道によると、当時の米軍の医師たちは、睡眠不足に対処するために、パイロットに少量のアンフェタミンを処方していたんだって(空軍はこの悲劇をアンフェタミンの使用に直接結び付けてはいないけど)。戦場でパフォーマンスを高めるために興奮剤を使用することは、新しいことではなくて、第二次世界大戦中には、イギリス軍のために7200万錠のアンフェタミン錠剤が購入され、ナチスドイツでもアンフェタミンの誘導体が使用されていたんだって。2000年以上前、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスは、戦争に対して全く異なるアプローチをとったと言われているんだって。彼の治世中に鋳造されたコインには、蝶の羽ばたきを抑えるカニの紋章と、「Festina Lente」(ラテン語)または「σπεῦδε βραδέως」(ギリシャ語)という言葉が刻まれていて、「ゆっくり急げ」という意味なんだって。アウグストゥスは、軽率さは軍司令官にとって大きな欠点であり、ゆっくりと行動することでより多くのことを達成できると考えていたから、と。
プレッシャーの下で作業すると、簡単にギア3の状態に陥ってしまう可能性があるから、ハイリスクな意思決定に依存している業界では、危機的状況下で、考えなくても実行できる意思決定のシーケンスをリハーサルするように、スタッフを訓練しているんだって。原子力発電所、石油掘削リグ、潜水艦、大手銀行などは、危機発生時の緊急プロトコルの訓練を実施している職場の例、と。
次は、「意思決定疲労を軽減する」っていう話。意思決定は非常に疲れるから、それによって生じる疲労には、特別な名前があるんだって。「意思決定疲労」っていうんだって。意思決定疲労は、新しい意思決定をするたびに蓄積するんだって。蓄積するにつれて、精神的なリソースが枯渇して、意思決定能力が低下する、と。脳がリソースの出血に対処するために、蛇口を閉めるようなものなんだって。
意思決定疲労は、リスク回避性を高めるんだって。銀行員が数時間休憩を取っていないと、融資を拒否する件数が増えたり、NHSのヘルプラインに対応する看護師が、電話を受けるたびに、ますます慎重になるのは、このためなんだって。140人の看護師が受けた400件の電話の分析では、看護師は電話に出るたびに、患者に医療機関への受診を勧める可能性が5.5%高くなっていて、これは勤務時間に関係なく、1時間ごとに約20.5%増加していることになるんだって。意思決定の質の低下は、勤務時間ではなく、意思決定の回数に直接関係していた、と。
意思決定疲労を軽減する方法は、3つあるんだって。
・選択肢の数を減らす。選択肢が多ければ多いほど、それぞれの選択肢を詳細に処理して評価するために、より多くの精神エネルギーが必要になる。
・最初に下準備をして、実際の意思決定を遅らせる。選択肢を探求するよりも、選択することの方が疲れる。ウィンドウショッピングが実際の買い物よりも精神的に疲れない理由や、後で絞り込むために複数のオプションを選択することが、今すぐに1つのオプションを選択するよりも疲れないのは、このためなんだって。
・できるだけ多くの休憩を、できるだけ長く取る。脳がリソースを補充する時間を与えるために、と。
最後に、「注意力の限界を克服する」っていう話。技術とコミュニケーションの目覚ましい進歩のおかげで、情報が非常に安価になり、注意力が貴重になったんだよね。情報伝達の制限要因は、もはや情報の生成や配信ではなくて、それを受け取る人の注意なんだって。旧石器時代には、情報(食料、水、避難場所の方向を示すための情報)を探していたんだよね。情報化時代には、私たちは狩られる側になるんだって。情報が私たちを狩る、みたいな。
私たちの注意リソースは有限だから、新しい情報の絶え間ない誘惑のせいで、私たちは、一度に一つのことをするシリアル処理から、追いつくために、多くのことを同時にしようとする並列処理に移行せざるを得なくなるんだよね。今やっていることから離れて、新しいデータに取り組んで、そこから離れて、再び今やっていたことに取り組むっていう作業を繰り返すのは、精神的にコストがかかり、精神的な負担を増大させるんだよね。
テレビのベテランのニュースキャスターは、2つの非同期の情報の流れを同時に処理することに特に長けているんだって。これは、カメラに向かって話しながら、イヤホンを通してプロデューサーの話を聞いているときに起こるんだよね。彼らは、最初に一方の流れに注意を払い、次にもう一方の流れに注意を払うのではなく、どういうわけか両方の流れを1つの現実の源に融合させているように見える、と。知識労働の世界にいる私たちのほとんどにとって、マルチタスクとは、短期間にさまざまなタスクをすばやく切り替えることを意味するんだよね。仕事によって、必要な集中度やスピードが異なるから、タスクを切り替えるには、必然的に注意を切り替えたり、ギアを変えたりする必要があるんだよね。
タスクの切り替えは、人間関係の切り替えに少し似ているんだって。新しい関係に完全にコミットする前に、前の関係を乗り越える必要があるんだよね。メールを読むことからプレゼンテーションの準備をすることへ、または会議に出席することからアイデアをブレインストーミングすることへ移行する場合でも、次に行うことに取り組むためには、今やっていることから離れなければいけないんだよね。うまく離れることで、移行を効率的に、そして負担を軽減できるんだって。以前に説明したテクニックを使って、単にターゲットから注意をそらすだけで、離れることができる、と。
離脱の必要性は、切り替えようとしている対象に、より集中していればいるほど重要になるんだって。人間関係のアナロジーを使うと、深く愛していたパートナーから立ち直るには、より多くの努力が必要になるよね。マルチタスクが深く集中した作業とは相容れないのは、このためなんだって。注意が集中しているほど、離脱するのが難しくなる、と。
注意の焦点を少し曖昧にして、脳がより柔軟で探索的になるように設定されている高エネルギーのギア2の状態であれば、注意をそらすのが容易になるんだって。マルチタスクセッションを開始する直前に、エネルギッシュな運動をすると、パフォーマンスが向上するのは、このためなんだって。2019年の日本の研究では、30分の中強度の(トレッドミル)運動が、約30分後に実施されたマルチタスクセッションのパフォーマンスを向上させることがわかったんだって。
タスクの切り替えには、ギアの迅速なリセットが必要になる場合があるんだって。これは特にスポーツでよくあることなんだって。バスケットボールやサッカーをしている場合は、ギア3でピッチを駆け回り、ギア2でコントロールして得点するんだよね。バイアスロン選手は、ギア3で最大出力でダウンヒルスキーをしている状態から、ギア2で安定した目でライフルを狙う状態に、すばやく切り替える必要がある、と。
マルチタスクは、知識労働の現場でもますます一般的になっているんだって。例えば、企業のデジタルインフラを担当している人は、緊急事態が発生したときに、すべてを中断して、緊急に不具合を修正したり、次の瞬間には、高度な集中力が必要な複雑なソフトウェアに取り組んだりする必要があるかもしれないんだよね。しかも、それを一日に何度も繰り返すかもしれない、と。
ギア3からギア2にシフトダウンする方が、ギア2からギア3にシフトアップするよりも、はるかに難しいんだって。状況の緊急性と、それに対する感情的な反応が、ギアを急上昇させて、2から3への移行を助けるんだけど、ギアを逆方向にシフトするには、意識的な努力が必要になるんだよね。これを行うための戦略は、本の以前の章で説明した通り、と。
最後に、「仮想世界に生きる」っていう話。テクノロジーが急速に進歩するにつれて、私たちが住む、触覚的でしっかりした世界は、何千倍も速く動く仮想世界に変化したんだよね。私たちの脳は、想像力を使って、この仮想世界をナビゲートしなければいけないんだって。しかも、光の速さで、と。
2005年に、テキサスA&M国際大学の情報システム学の教授である、哲学者ネッド・コックは、人間は互いを見ながら、互いの話を聞きながら、非言語的なサインを直感的に理解し、すぐに反応するように進化してきたから、進化の過程で、このようなことをほとんど苦労せずにできる特殊な脳回路が備わった、っていう理論を立てたんだって。人の顔が見えなかったり、声が聞こえなかったり、非言語的なサインを読めなかったり、リアルタイムで反応できなかったりするような、より「不自然な」状況でコミュニケーションを取り始めると、より新しく、効率の低い脳回路を使用せざるを得なくなるんだって。デジタルコミュニケーションが、より精神的な負担を感じるのは、このためなんだって。コックの研究によると、電子メールで複雑なアイデアを伝えるためには、対面コミュニケーションよりも、5倍から15倍の労力がかかることがわかっているんだって。私たちが進化してきたコミュニケーションの方法から遠ざかるほど、脳への負担は大きくなる、と。
脳が有形の世界よりも仮想の世界に適応しているのは、これだけではないんだって。例えば、タブレットや画面で読む方が、物理的な本を読むよりも、精神的な負荷が大きくなることが研究でわかっているんだって。本を読むとき、情報は空間に物理的に存在するという暗黙の感覚があるんだよね。忘れてしまった詳細や、失われた名前を、手探りで思い出すことができる、と。時間、空間、知識が密接に結びついているんだよね。読んでいない本の部分が減るにつれて、物語の終わりが近づいていることがわかる、と。自分がどこにいて、どこに向かっているのかについて、不確実性はないんだよね。タブレットや電子書籍リーダーは、本の中のストーリーを、このような形で物理的な空間に刻み込む能力を奪ってしまうんだって。情報を検索する必要がある場合、情報がどこにあるかを示す物理的な手がかりがないから、ワーキングメモリーがすべての作業をしなければいけない、と。
仮想現実(VR)は、現代の仕事が手作業から頭脳労働に移行していることを示す、より極端な例の一つなんだって。現実世界では、脳は体と分担して作業しているんだよね。楽器を演奏したり、プロトタイプを作成したり、スプレッドシートにデータを入力したりする場合でも、触覚的な手がかりが脳の現実モデルにテクスチャとコンテキストを与え、脳の予測処理を強化するんだって。VRヘッドセットを使用すると、この感覚情報を脳が補完しなければいけないんだよね。これにより、精神的な負荷が増加し、パフォーマンスや、一部の種類の学習が阻害される可能性がある、と。
ふう、長かったけど、だいたいこんな感じかな。結局、情報に溢れた時代を生き抜くには、脳の負担を減らして、注意力を最大限に活かすことが大事なんだね。