Chapter Content
えー、ちょっと時間がないっていうか、時間が足りないみたいな話なんですけど。
昔、1881年にね、ジョージ・ミラー・ビアードっていう神経の専門家が、まあ、電信がアメリカ人の神経質さを増長させてるみたいなことを言ってたらしいんですよ。電信がなかった時代は、今みたいに価格が秒速で変動したりしなかったから、ビジネスマンもそこまで神経質にならなかった、と。まあ、今となっては電信なんてめっちゃ遅いんですけどね。
今なんて、ロンドンとニューヨークの金融データを光の速さでやり取りしてるわけでしょ? すごいですよね。5ミリ秒短縮するために海底ケーブル敷いたりとかね。もう、なんか、ハイ頻度取引の世界では、1000分の1秒の差が何百万ドルの利益になるみたいな話ですから。
人間の目の瞳孔が光に反応する速度でさえ、5分の1秒かかるわけですよ。それに比べたら、金融取引のマイクロチップなんて、7400億分の1秒で取引を完了させちゃうんだから、もう、人間の認識を超えてますよね。世界経済が地球を回してるっていうか、もう、速すぎて目に見えないみたいな。
人間の脳って、常に周りのペースに合わせて情報を処理しようとするじゃないですか。だから、情報のスピードが速すぎると、世界がどんどん先に進んでいくように感じて、焦っちゃうみたいな。時間がないって感じると、脳みそがフル回転しちゃうし、時間があるって感じると、ゆっくりモードになるしね。
で、テクノロジーがない時代と比べて、今のコミュニケーションってめっちゃ速いですよね。会話のスピードも、速読のスピードも、全然違うし。昔の手紙みたいに、じっくりと状況を説明するみたいなこともなくなって、メールの短い文章になったり、インスタントメッセージのフレーズになったり、今じゃもう、単語とか略語とか絵文字とかで済ませちゃうみたいな。
情報化時代は、分析とかストーリーよりも、削ぎ落とされた情報の方が好まれる、と。短いメッセージの方が情報量が少なくて覚えやすいって思うかもしれないけど、実は逆で、情報が断片的すぎると、理解するのが難しくなるらしいんですよ。統計とか単独の事実として伝えられるよりも、ストーリーに組み込まれてる方が、覚えやすいっていう研究結果もあるみたいだし。
つまり、情報を理解するには時間が必要ってことですよね。いろんな方向からものすごいスピードで情報が押し寄せてきたら、もう、アクセル全開でギアを上げざるを得ないじゃないですか。でも、ギアを上げすぎると、新しい情報に注意を向ける時間が短くなって、消化不良になっちゃう、と。常に次の情報に飛びつく準備をしてるから、前の情報が定着しないみたいな。
ロバート・ハッサンっていう人が書いた本に、「ネットワーク化されたコンピューターは、スピードが組み込まれてるから、落ち着きのない状態を促進してしまう」みたいなことが書いてあるらしくて。情報が多すぎて、時間に追われてるから、「省略された思考」に頼らざるを得なくなる、と。
3語のテキストメッセージは、3文のメールよりも書いたり読んだりする時間は短いかもしれないけど、メッセージの意図を理解するためには、より多くのリソースが必要になる、と。
あと、情報が緊急度を帯びれば帯びるほど、早く処理しなきゃって感じちゃうじゃないですか。緊急っていうのは、スピードを要求するんですよね。情報が発生した瞬間にそれを受け取ると、その情報が持つ意味がまだわからないから、脳が混乱して、ものすごく緊急性を感じてしまう。だから、「速報」って聞くと、普通のニュースよりもドキッとするんですよね。
情報を受け取るタイミングが早ければ早いほど、空間的にも近くに感じてしまうっていうか。時間が縮まると、空間も縮むみたいな。現代のスピード社会では、重要かどうかに関わらず、すべての情報が瞬時に伝わるじゃないですか。で、ほとんどの情報には、緊急性を演出するような仕掛けが施されてる、と。
その結果、情報インフレみたいな状態になって、すべてが速報扱いになって、常に大量のメールに溺れてるみたいな。それを全部瞬時に処理しようとすると、脳みそがフル回転して、常にギア3の状態になっちゃう。
ある企業のマネージャーの人が、メールの処理に苦労してるって話を聞いたんですけど、最初は、「重要」ってラベルがついてるメールを優先してたらしいんですよ。でも、みんながそれに気づいて、「重要」ラベルを濫用するようになった、と。
次に、「件名に『至急』って書かれてるメールは優先的に読む」って周知したらしいんですけど、今度は、「至急」だらけになっちゃって、対応しきれなくなった、と。それで、みんなが件名に「至急!至急!」とか「至急!至急!至急!」って書くようになったり、感嘆符やアスタリスクを連発するようになったりしたらしいんですよ。
さらに、返信を早くもらうために、関係者をどんどん増やすっていう戦法も出てきたらしくて。でも、結局、誰も返信しなくなるっていう本末転倒な結果になった、と。で、結局、今は、件名の最初の数語に具体的なアクションが書かれてて、「至急」って言葉が使われてないメールの方が、注意を引くっていう結論に至ったらしいです。
「至急」って言葉が溢れかえってるせいで、常に警戒状態になって、集中して作業するために必要なギア2に切り替えるのが難しくなってるっていうのもありますよね。
あと、締め切りっていうのも問題で、脳みそって、工場のベルトコンベアみたいに一定のスピードで動いてるわけじゃないじゃないですか。調子がいい時もあれば、悪い時もあるし、集中できる時もあれば、集中できない時もあるし。
だから、客観的な時間で測ることはできないんですよね。集中してる時は時間の流れが早く感じるし、退屈してる時は遅く感じるし。締め切りがあると、「30分集中して作業した時間」と「30分無意味な会議に参加した時間」が同じ価値だって勘違いしちゃう。
締め切りは、創造性も損なうらしいですよ。締め切りを意識しすぎると、ギア3に入っちゃって、創造的なアイデアが生まれなくなる。ベル研究所の創造性が、締め切りに縛られなかったからこそ生まれたっていう話もありますしね。
で、現代のコミュニケーションは、時間と空間の境界線を曖昧にしてしまって、常に生産性を維持しなければならないような状況を作り出してる、と。
で、常に集中力を要求される仕事っていうのは、2種類あって、一つは、次から次へと問題が押し寄せてくるようなアクティブな仕事。もう一つは、機械が作業してるのを監視するようなパッシブな仕事。
アクティブな仕事は、疲れるのが早いし、集中力もすぐに低下してしまう。だから、脳が疲れてきたら、ほんの数秒間休憩して、リフレッシュするのが重要らしいです。
で、最近は、機械が作業してるのを人間が監視するっていう仕事が増えてきてるじゃないですか。システムが効率的だと、エラーが少ないから、長時間退屈な監視をすることになる、と。
こういうパッシブな仕事は、集中力がすぐに低下してしまうし、20分くらいで飽きてきちゃうらしいんですよ。だから、3分から10分くらいの短い休憩を挟むのが効果的。休憩の長さよりも、頻度の方が重要みたいです。
あと、パッシブな仕事は、学習の進捗を感じにくいっていうデメリットもあるらしいんですよ。目標がないから、モチベーションを維持するのが難しいっていうか。例えば、航空管制官が事故がないか監視してる場合、何事もなく一日が終わったら、何もしてないのと同じように感じてしまう。つまり、内在的なモチベーションが全く存在しないから、精神的に疲れてしまう、と。
でも、こういう仕事って、セキュリティビデオの監視とか、気象データの監視とか、重要な仕事が多いじゃないですか。だから、脳波を測定して、集中力が低下してる作業員に警告を発するっていうシステムを導入してる企業もあるらしいです。
パッシブな仕事の退屈さを軽減するためには、フィードバックと目標っていう2つの要素を積極的に導入するのが効果的らしいです。
フィードバックがあると、従業員のエンゲージメントが向上する、と。世界に話しかけて、世界が応答してくれると、世界がよりリアルに、より面白く感じられる。例えば、航空管制のシミュレーションで、航空機が空域に入ってきた時に、ただ監視するだけじゃなくて、画面をクリックしてそれを認識するっていう行為を加えるだけで、パフォーマンスが向上したらしいです。
目標を持つことも、集中力を維持するのに役立つらしいですよ。目標を設定したり、ToDoリストを作ったりする人が多いのは、そのためですよね。カリフォルニアの研究者が、脳損傷を負った退役軍人を対象に、目標志向的な注意自己調整(GOALS)トレーニングっていうのを試したらしいんですけど、5週間後には、注意力が大幅に改善されたらしいです。
で、最後に、パッシブな仕事で眠気を覚ますためには、刺激を与えて、ギアを上げるっていうのも効果的らしいです。例えば、大きな音を聞いたり、急に手を叩いたりすると、集中力が戻るらしいです。あとは、複雑じゃない単純な作業をマルチタスクで行うのも、ギアを上げるのに役立つらしいですよ。