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Calculating...

えっと、今回は何の話をしようかな…そうそう、経済的なモチベーションについて話そうかなと思います。

アダム・スミスって知ってる?経済学の父って言われてる人なんだけど、その人が書いた『国富論』って本の中で、アメリカ合衆国の未来についてすごい予言をしてるんだよね。当時、アメリカってまだイギリスの植民地だったんだけど、「この国はきっと世界で一番強くて恐ろしい国になるだろう」って見抜いてたんだから、すごいよね、本当に。

まあ、スミスが一番有名なのは、政治的な洞察力じゃなくて、経済的な視点なんだけどね。「分業によって、いろんな産業の生産性がめちゃくちゃ上がって、それが社会全体の豊かさにつながるんだ」って言ってて、それがスコットランドとかアメリカで実際に起きたんだから、やっぱり先見の明があったんだなーって思うよね。

GDPって、よく経済の指標で使われるけど、イギリスの一人当たりのGDPは1776年からもう何十倍にもなってるんだって。でもね、それだけじゃ変化の大きさを全然伝えきれないんだよね。スミスが『国富論』を書いた頃って、羽根ペンで書いてたし、水道もなかったし、明かりはろうそくだったんだよ。住んでたエディンバラの街も、馬の糞だらけで臭かったらしいし。想像できる?今の生活とは全然違うよね。

『国富論』の最初の方には、ピン工場の話が出てくるんだよね。10人くらいの人が働いてて、分業することで一人一日4800本もピンを作れるんだって。でも、もし一人で全部作ってたら、20本も作れないかもしれないって言うんだよ。分業ってすごいよね、本当に。この本のテーマは、まさにその分業とか、知識の積み重ねとか、専門的な能力を組み合わせることで、ピン工場からiPhoneとかAirbusみたいなものが生まれてきたって話なんだよね。

人間って、社会的な生き物じゃん。競争もするけど、コミュニケーションとか協力することにかけては、他の動物とは比べ物にならないくらいすごいんだよね。みんなで協力することで、一人じゃ絶対できないようなことができちゃうんだ。所属欲求とか承認欲求もあるしね。競争も大事だけど、協力がないと、努力が実らないし、新しいものが生まれないんだよね。国の経済が成功するかどうかって、競争と協力のバランスをどう取るかにかかってるんだと思う。

で、組織ってなんで存在するかっていうと、人間が一人じゃできないことを、みんなでやるためなんだよね。昔、あるデザイナーが、自分でトースターを作ろうとしたらしいんだけど、9ヶ月もかかって、お店で買うトースターの250倍もお金がかかったんだって。しかも、お店で買った方が全然性能がいいっていう。トースターですら一人で作るのは大変なのに、iPhoneとか原子力発電所なんて、絶対に無理だよね。誰も作り方を知らないし。

スポーツクラブとかもそうだし、美術館とかもそうだけど、みんなで何かをするって、すごい力になるんだよね。飛行機だって、たくさんの人が協力して作るから、空を飛べるんだもんね。組織が成功するかって、みんなでやった結果が、一人一人がバラバラにやった結果よりも価値があるかどうかってことだと思うんだ。

印刷技術ができたことで、今まで限られた人しか読めなかった本が、たくさんの人に読まれるようになったし、運動も、みんなでやった方が楽しいし、一人じゃ使えない施設も使えるようになる。美術館だって、みんなで見に行くから楽しいんだよね。大学も、色んな先生の知識をまとめて学べるから、いい教育ができる。要は、組織って、色んな人の知識とか経験を集めて、それをみんなで共有することで、新しいアイデアが生まれたり、問題が解決できたりするってことなんだよね。

マラソン大会だって、みんなで走るから楽しいんだよね。スポーツって、競争と協力が同時にできるから、すごくいい例だと思うんだ。ビジネスの話だと、先入観とか色々あるけど、スポーツの話なら、みんな気軽に話せるしね。何万人もの人が集まって、みんなで同じ道を走るって、本当にすごいことだと思うよ。

まあ、集団で行動する理由って、経済的なことだけじゃないんだよね。マラソン大会に参加する人だって、お金のためだけじゃないじゃん。チャリティーのために走る人もいるしね。「誰も俺たちのこと好きじゃないけど、気にしない」みたいな応援歌もあるし(笑)。職場でも、給料のためだけじゃなくて、同僚とのつながりとか、自分の仕事が認められることとか、そういうのも大事なんだよね。ボーナスだって、お金だけじゃなくて、自分が認められたってことの象徴でもあるんだよね。

心理学者のチクセントミハイって人が言うには、人は仕事をしている時の方が、家にいる時よりも幸せを感じやすいんだって。難しいことに夢中になって、それが成功した時の喜びを「フロー」って言うんだけど、それも集団で何かをすることで得られることが多いんだって。メッシのゴールとか、スティーブ・ジョブズのiPhone発表とか、クラウディオ・アバドのベルリン・フィル指揮とか、そういうのを見てると、フローの力ってすごいなって思うよね。

でもね、ギネスとかメッシとかジョブズとかも、ただ利他的な理由でやってるわけじゃないんだよね。観客を魅了することとか、お金を稼ぐこととか、そういうのもモチベーションになってるんだよ。エベレスト単独登頂だって、誰かのためってわけじゃないしね。結局、虚栄心とか自己利益とかも、モチベーションの一部なんだよね。

最後に、スティーブ・ジョブズの言葉を借りると、「本当に満足するためには、自分が素晴らしいと思うことをやるしかない。そして、素晴らしいことをするためには、自分の好きなことをやるしかない」ってことなんだよね。ギネスもメッシもメスナーも、ジョブズも、みんな自分の才能に夢中で、だからこそすごいことができたんだと思う。クラウディオ・アバドは、アメリカのオーケストラについて「音楽が終わる前に、時間が終わってしまうんだ」って言ってたけど、これはみんなで同じ目標に向かって頑張るっていうことと、契約上の義務を果たすっていうことの違いをすごくよく表してると思うんだ。

…こういう話って、当たり前すぎて退屈に聞こえるかもしれないけど、ビジネスの世界では、全然違う話がされてることが多いんだよね。マルクス主義的な考え方だと、ビジネスは資本家と労働者の対立だって言うし、機械的な考え方だと、会社は生産関係によって定義されるって言うんだよね。でも、社会とか政治とか技術は大きく変わってるのに、昔の考え方がまだ残ってるんだよね。

階級とか身分も、ビジネスの世界で影響力を持ってるけど、1850年とは全然違うんだよね。昔は字が読めない人が多かったけど、今は大学に行く人が多いし、昔は貴族が政治を仕切ってたけど、今は普通選挙になってる。昔は銀行の重役とかは偉い人だったけど、今は現場の責任者の方が偉いっていうこともある。アメリカは早くから貴族制度を廃止したけど、すぐに富に基づく階級制度ができちゃったんだよね。メトロポリタン美術館のガラとかは、今のお金持ちの社交場みたいなもんだよね。

「資本」っていう言葉も、昔は個人の財産と生産手段の両方を意味してたんだよね。産業革命前は、土地が一番大事だったし。個人の財産と生産資本を結びつけることが、産業革命の大きな特徴だったんだよね。でも、そのつながりもだんだん薄れてきて、昔みたいに土地を持ってなくても、ビジネスで成功すれば、新しい事業にお金を出せるようになったんだよね。

アダム・スミスとかカール・マルクスが描いた繊維工場とか製鉄所とか、アーロン・バーとかアレクサンダー・ハミルトンが作った金融システムを参考に作られた考え方が、今のAppleとかGoogleみたいなビジネスの世界を説明できるなんて、ちょっと傲慢だと思わない?昔は「信用で一番大事なのは人柄だ」って言われてたけど、今はコンピュータが匿名で取引する時代だし。資本主義を打倒しようってスローガンが、メットガラのドレスに書かれるなんて、昔じゃ考えられなかったよね。

最近の経済学者とか法律学者は、階級よりも個人のアイデンティティを重視するようになってきてるんだよね。個人主義的な考え方が、政治とか経済の思想の中心になってるんだ。ロールズとかノージックとかは、経済学の視点を取り入れて、新しい社会契約論を考え出したんだ。ロールズは、一番恵まれない人のことを重視するべきだって言って、ノージックは、財産権を守るべきだって言った。

ロールズは、「もし自分がどんな立場で生まれるか分からなかったら、どんな社会がいいと思うか?」って問いかけて、自己利益を考えれば、一番恵まれない人を守りたいと思うはずだって結論づけた。一方、ノージックは、正当な方法で手に入れた財産は守られるべきだって言って、政府は個人の権利を守るために存在するって考えた。だから、政府が所得を再分配するべきじゃないって言うんだよね。

どっちの考え方も、個人と国家を対立させてるんだよね。右派は個人の自由を重視して、左派は政府が規制したり、みんなで協力することを求めたりする。でも、どっちの考え方も、地域社会とか職場とか、経済とか社会生活で大事なコミュニティの役割を軽視してるんだよね。コミュニティ間の競争とか協力こそが、繁栄の基盤なのに。

ジェンセンとメクリングっていう人が書いた論文には、「企業は、個人間の契約の束にすぎない」って書いてあるんだよね。企業は、一時的に一緒にビジネスをするのが有利な人たちの集まりだって言うんだ。

メクリングはもう亡くなっちゃったんだけど、ジェンセンは、娘さんに紹介された自己啓発の教祖に影響を受けて、人生観が変わったんだって。その教祖は、色々 Controversialな人だったらしいんだけど、ジェンセンはその後、誠実さについて色々書くようになったんだって。

こういう個人主義的な考え方をビジネスに当てはめると、人間の社会的な本能が軽視されて、インセンティブに反応することばかりが重視されるようになるんだよね。合理性っていうのは、お金儲けのことだけになってしまって、組織もそういう風に設計されちゃう。そういう組織は、人間味のない機械的な組織になっちゃうんだよね。

昔書いた本の中で、私も企業は関係性の集まりだって考えて、「契約の束」っていう考え方に賛成してたんだけど、その時は、その関係性が社会的なものじゃなくて、ただの取引だってことに気づいてなかったんだよね。ビジネスの関係性を取引として捉えすぎたせいで、ビジネスと社会の関係だけじゃなくて、ビジネス自体の効率も悪くなってしまってるんじゃないかっていうのが、今回の本の主張なんだよね。

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