Chapter Content

Calculating...

えーとね、想像してみてほしいんだけど、もし一酸化二水素、つまりH2Oが支配する世界に住めるかどうか。これ、無色無臭の化合物で、性質がすごく変わりやすいんだよね。普段は穏やかだけど、時々、命に関わるほど危険になる。状態によってだけど、熱湯でやけどしたり、凍傷になったりするし。もし、なんか有機分子があれば、炭酸を作ったりもするんだ。炭酸って本当に厄介で、木の葉を全部落としたり、彫刻の表面を侵食したりするんだよ。大量にあって、刺激されると、激しい攻撃をしかけてくるし、人間の建物なんて、全く歯が立たない。一応、一緒に生活することを学んだ人たちにとっても、やっぱり危険がいっぱいなんだよね。で、僕らはこの物質を「水」って呼んでる。

どこにでも水はあるよね。ジャガイモの80%、牛の74%、細菌の75%が水なんだって。トマトは95%が水、ほぼ全部水だよね。人間だって65%が水で、液体と固体の比率は大体2対1くらい。水って不思議なもので、形はないし、透明だけど、なぜかそばにいたくなる。味はないのに、ついつい味わいたくなるし。わざわざ遠くまで行って、お金もいっぱいかけて、太陽の下でキラキラ光る様子を見に行くんだからね。危ないってわかってるのに、毎年何千人も溺れて亡くなってるのに、それでも水に入りたくてしょうがないんだよね。

水ってどこにでもあるから、その珍しさに気づきにくいんだけど、他の液体とは全く違う性質を持ってるんだよね。水の性質から他の液体の性質を推測したり、その逆も、ほとんどできないんだ。もし水のことを何も知らなくて、化学的に似た化合物、特にセレン化水素とか硫化水素の振る舞いから推測すると、水はマイナス93度で沸騰して、室温では気体になるはずだって考えると思うよ。

ほとんどの液体は、冷えると約10%縮むんだよね。水もそうなんだけど、ある程度までしか縮まない。氷点に近づくと、水は、常識に反して、面白くて、不思議なことに、膨張し始めるんだ。固体になると、体積が元の10%くらい大きくなる。水が凍る時に膨張するから、氷は水に浮くんだよね。ジョン・グリビンが言ってたけど、「これは極めて奇妙な特性」なんだって。もし氷が沈んでしまうと、湖とか海は底から凍り始めることになる。表面の氷が内部の熱を守ってくれなかったら、熱がどんどん逃げていって、水がどんどん冷えて、氷がどんどん増える。そうすると、湖も海もすぐに凍りついて、おそらく、それがずっと続くことになる。そんな状態じゃ、生命はほとんど生まれないよね。本当に、水が化学法則とか物理学の原理を知らないみたいでよかった。

みんな知ってると思うけど、水の化学式はH2O。これは、大きな酸素原子一個に、小さい水素原子二個がくっついているって意味だよね。水素原子は、酸素原子をしっかりと掴んで離さないし、他の水分子ともちょっとくっついたりする。だから、まるで他の水分子と踊っているみたいに、短時間だけペアになって、また移動するんだ。ロバート・クンツィヒが言うには、まるでスクエアダンスみたいに、相手をどんどん変えていくんだって。コップ一杯の水は、何も動いてないように見えるかもしれないけど、中の分子は、一秒間に何十億回も相手を変えているんだよ。だから水分子は、くっつき合って水たまりとか湖を作ることができるんだけど、完全にくっついているわけじゃない。プールに飛び込めばわかるよね。実際には、常に15%くらいの水分子しか互いに接触していないんだ。

ある意味で、このくっつき方はすごく強いんだよね。だから、水はストローで上まで上がってくるし、車のボンネットについた水滴が、仲間と集まって水玉になる。これも水の表面張力のおかげ。表面の分子は、上にある空気よりも、下とか横にある分子に強く引っ張られるんだ。だから、表面に強い膜ができて、虫が止まったり、石で水切りができたりする。飛び込みの時にも、ちょっと支えになってくれるんだよね。

言うまでもないけど、水がなければ、僕らは存在しない。水がないと、人体はすぐにバラバラになっちゃう。ある記事によると、数日経つと、唇が消えて、「まるで切り取られたみたいになり、歯茎は黒ずみ、鼻は半分くらいの長さに縮み、目の周りの皮膚は縮んでまばたきもできなくなる」んだって。水は僕らにとってすごく重要だから、地球上にあるほとんどの水が、僕らにとっては有毒だってことに、なかなか気づかないんだよね。塩分が入ってるから。

生きるためには塩分が必要だけど、ほんの少しだけ。海水には塩分が多すぎるんだよね。約70倍も。だから、安全に代謝できない。海水1リットルには、大体2.5ティースプーンくらいの普通の塩、つまり僕らが料理に使う塩が入っているんだけど、それ以外にも、たくさんの元素とか化合物とか、溶けているものが含まれていて、これらを全部まとめて塩って呼んでるんだ。塩分とかミネラルの割合は、僕らの体の組織の中にある割合と、海水の中にある割合と、ほとんど同じなんだ。マージリスとセーガンが言ってたけど、僕らがかいた汗は海水だし、流した涙も海水なんだよね。でも不思議なことに、外から入ってくる塩分には耐えられない。大量の塩分を摂取すると、すぐに代謝がおかしくなる。細胞の中にある水分子は、まるでボランティアの消防隊員みたいに、急増した塩分を薄めて洗い流そうとする。その結果、細胞は水分不足になって、正常に機能しなくなる。簡単に言うと、細胞が脱水状態になるんだよね。極端な場合には、脱水状態が原因で、発作が起きたり、昏睡状態になったり、脳が損傷したりする。同時に、働きすぎた血球は、塩分を肝臓に運び、最終的には腎臓に負担がかかりすぎて、機能停止する。腎臓が正常に機能しなくなると、死んでしまう。だから、海水を飲んではいけないんだよね。

地球上には13億立方キロメートルの水があるんだけど、これが全部。システムは閉じられていて、これ以上増えることも、減ることもない。僕らが飲んでいる水は、地球ができた時からずっと、ここにあるんだ。38億年前には、海は大体今の大きさになっていたんだって。

水域は水圏って呼ばれていて、そのほとんどが海だよね。地球上にある水の97%が海にあり、特に太平洋が多い。太平洋の面積は、すべての大陸を合わせたよりも広いんだ。全体として、太平洋はすべての海水の半分以上(51.6%)を占めていて、大西洋は23.6%、インド洋は21.2%。他のすべての海を合わせても、たった3.6%にしかならないんだ。海の平均深度は3.86キロメートルで、太平洋は平均して大西洋やインド洋よりも約300メートル深い。地球の表面の60%は、深さ1.6キロメートル以上の海なんだよね。モルップ・バウアーが言ってたけど、僕らの惑星は地球じゃなくて、水球と呼ぶべきなんだって。

地球上にある水の3%だけが淡水で、主に氷床の形で存在している。ほんのわずかな淡水、0.036%だけが、湖とか川とか貯水池に存在していて、さらに少ない0.001%だけが、雲の中にあるか、水蒸気の形で存在しているんだ。地球上にある氷の約90%は南極にあり、残りは主にグリーンランドにある。南極に行くと、3キロメートル以上の厚さの氷の上に立つことになるけど、北極ではたった4.6メートルしかないんだ。南極大陸だけでも、2500万立方キロメートルの氷があるんだって。全部溶けたら、海面が60メートルも上昇するんだよ。でも、大気中の水が全部雨になって、均等に降ってきたとしても、海はたった2センチメートルしか深くならないんだって。

ちなみに、海面ってほとんど理論上の概念なんだよね。海は全く平らじゃない。潮の満ち引きとか、海風とか、コリオリ力とか、いろんな要因で、海の水位は大きく変わるし、同じ海の中でも水位は違うんだ。太平洋の西部は、地球の自転による遠心力の影響で、約45センチメートル高くなってるんだって。水を張った桶を引っ張ると、水は反対側に移動するけど、それと同じ原理で、地球が西から東に自転することで、海水が海の西側に押し寄せているんだよね。

海は昔から僕らにとってすごく重要だったんだけど、科学界が長い間、海に興味を持たなかったのは、ちょっと不思議だよね。19世紀に入るまで、僕らの海の知識は、浜辺に打ち上げられたものとか、漁網にかかったものから得られたものだけだったんだ。ほとんどの文献は、実際の証拠に基づいたものではなくて、面白い話とか仮説に基づいたものだったんだよね。19世紀30年代に、イギリスの博物学者エドワード・フォーブスが、大西洋とか地中海の海底を調査して、600メートルより深いところには、生命は存在しないって発表したんだ。それは、もっともらしい仮説だった。その深さには光がないから植物はないし、圧力もすごく高いって知られていたからね。だから1860年に、深さ3キロメートル以上の海底から引き上げられた、最初の大西洋横断電線に、サンゴとか貝とか、小さな生き物がたくさん付着しているのが発見された時は、みんな本当に驚いたんだ。

1872年になって初めて、海に対する本格的な組織的な調査が行われたんだ。大英博物館とか、王立学会とか、イギリス政府が共同で探検隊を組織して、退役した戦艦「チャレンジャー」号でポーツマス港から出発した。3年半かけて世界中を航海して、水を取ったり、魚を捕ったり、沈殿物を集めたりしたんだ。これはかなり単調な仕事だったみたいで、全部で240人いた科学者とか乗組員のうち、4分の1が脱走し、8人が死亡したり、精神を病んだりしたんだって。歴史家のサマンサ・ウェインバーグが言うには、「長年の単調な生活で頭が麻痺し、精神がおかしくなった」んだって。でも、彼らは約7万海里も航海して、4700種類以上の新しい海洋生物を収集し、50巻にも及ぶ報告書を作成するのに十分な資料を得て、世界の科学に新しい分野、海洋学を創設したんだ。水深を測定することで、大西洋の中央に山脈があることも発見した。これに興奮した探検隊員の中には、伝説の海底大陸アトランティスを発見したと考える人もいたんだ。

世界の学術機関は、あまり海を重視していなかったから、熱心なアマチュアの人たちが、海底について教えてくれたんだよね。現代の深海探査は、1930年にチャールズ・ウィリアム・ビーブとオーティス・バートンによって始まった。彼らは対等なパートナーだったんだけど、記録には、派手なビーブの方が目立つことが多いんだ。ビーブは1877年にニューヨークで、裕福な家庭に生まれて、コロンビア大学で動物学を学んだ後、ニューヨーク動物学会で鳥の飼育係になった。でも、すぐに飽きてしまって、冒険家の道を選んだんだ。その後四半世紀にわたって、アジアとか南米を旅して、いつも「歴史家兼技術者」とか「魚類問題アシスタント」とか名付けた、たくさんの美人女性を助手として連れていたんだ。その結果、彼は『ジャングルの縁』とか『ジャングルでの日々』っていう通俗的な本を出版したり、野生動物とか鳥類学に関する素晴らしい本を何冊か書いたりしたんだよね。

1920年代半ばに、ビーブはガラパゴス諸島に行って、いわゆる「吊り下げられた喜び」、つまり深海潜水を見つけたんだ。すぐにバートンと協力し始めた。バートンはもっと裕福な家庭に生まれて、コロンビア大学にも通っていて、冒険を求めていた。功績はほとんどビーブのものとされていたけど、深海探査球(ギリシャ語で「深い」という意味)を設計して、1200ドルをかけて作ったのは、実はバートンだったんだ。それは小さくて頑丈なケーソンで、3.8センチメートルの厚さの鋳鉄でできていて、7.6センチメートルの厚さの石英ガラス製の窓が二つ付いていた。中に二人入ることができたんだけど、かなり密接な生活を送る必要があったんだよね。当時の基準から見ても、技術的には複雑なものではなかった。球体は柔軟性に欠けていて、ただ長いケーブルの先に吊り下げられているだけだったし、呼吸システムも原始的なものだった。二酸化炭素を中和するためには石灰の缶を開けたり、水蒸気を吸収するためには塩化カルシウムの小皿を開けたりする必要があったんだ。化学反応を促進するために、ヤシの葉で扇いだりもしたんだって。

でも、その名前のない小さな深海探査球は、本当に役に立った。1930年6月、バハマ諸島での最初の潜水で、バートンとビーブは水深183メートルまで潜って、世界記録を作ったんだ。1934年には、その記録を900メートル以上にまで伸ばした。この記録は、第二次世界大戦が終わるまで破られなかったんだ。バートンは、装置が水深140メートルくらいまでは問題なく潜れると確信していたけど、1メートル潜るごとにボルトとかリベットからパキパキ音が聞こえてきたんだって。とにかく、どの深さでも、勇敢で危険な仕事だった。水深900メートルでは、小さな窓にかかる圧力は、1平方センチメートルあたり2.95トンにもなるんだ。もし圧力が構造の限界を超えてしまうと、そんな深さでは一瞬で死んでしまう。ビーブは多くの本とか記事とかラジオで、そのことをはっきりと書いていた。でも、彼らが一番心配していたのは、金属球と2トンの重さのケーブルを引っ張っている船の舷側が壊れて、二人が海底に送られてしまうことだった。そうなったら、間違いなく死んでしまうからね。

彼らの実験からは、科学的に価値のある成果はあまり得られなかった。今まで見たことのない生物に出会ったけど、視界が悪かったし、二人とも海洋学の専門家ではなかったから、本当の科学者が望むような形で、発見の詳細を説明することができなかったんだ。球体の外には照明がなかったから、250ワットの電球を窓に近づけるしかなかったんだけど、水深150メートル以下の水はほとんど光を通さないから、7.6センチメートルの厚さの石英ガラスを通して、必死に外を見なければならなかった。だから、中で興味津々に見ているものと、外で同じように興味津々に見ているものとが、出会う必要があったんだ。その結果、彼らはただ、下にたくさんの珍しいものがいるって報告することしかできなかった。1934年の潜水では、ビーブは大きなヘビを見てびっくりした。「6メートル以上もあって、とても太かった」んだって。それはあっという間に通り過ぎていったから、ただの黒い影にしか見えなかった。それが何だったのか、その後、誰も同じようなものを見たことがないんだよね。彼の報告は曖昧だったから、学術界からはあまり注目されなかった。

1934年の記録破りの潜水の後、ビーブは潜水に興味を失って、他の冒険的な仕事に目を向け始めたんだけど、バートンはあきらめなかった。称賛すべきことに、誰かに聞かれると、ビーブはいつも、この活動の本当の企画者はバートンだと認めていたんだけど、バートンは結局日の目を見ることができなかったみたいだ。バートンは、彼らの水中冒険に関する素晴らしい物語をたくさん書いて、探査球や凶暴なダイオウイカとの遭遇を描いた『海の底の怪物』っていう映画にも出演した。これらの話はエキサイティングだったけど、大部分は架空のものだったんだよね。彼はキャメルっていうタバコのCMにも出ていたんだ(「これを吸うと神経が落ち着く」)。1948年には、カリフォルニア近くの太平洋で水深1370メートルまで潜って、潜水記録を50%も更新したんだけど、世界は彼を理解しようとしなかったみたいだ。『海の底の怪物』についてのある新聞の記事では、映画のスターは実はビーブだっていう評価をしていた。今では、バートンは幸運にも、僕らの記憶に残っているけどね。

いずれにしても、彼はスイスの父と子のチームの前に、その名を消してしまうことになる。父親はギュスターブ・ピカール、息子はジャック・ピカールっていうんだけど。彼らは、深海潜水艇(深海探査船という意味)っていう新しいタイプの探査機を設計した。それはイタリアのトリエステで製造されたから、「トリエステ号」って名付けられたんだ。新しい装置は、独立して操作できるんだけど、上下にしか移動できなかった。艇が完成した1954年初頭の潜水で、水深4000メートルまで潜った。これは、6年前にバートンが作った記録の約3倍だ。でも、深海潜水はコストがかかるから、ピカール親子は破産の危機に瀕していたんだ。

1958年、彼らはアメリカ海軍と契約して、潜水艇の所有権を海軍に譲渡したんだけど、使用権は保持した。そのおかげで、彼らは多額の資金を得て、船を改造して、壁の厚さを約13センチメートルまで増やし、窓を直径5センチメートルまで小さくしたんだ。実際には、小さな覗き穴みたいになったんだけど、潜水艇はとても頑丈になって、大きな圧力に耐えられるようになった。1960年1月、ジャック・ピカールとアメリカ海軍のドン・ウォルシュは、西太平洋のグアム島の南約400キロメートルの地点で、ゆっくりと、海で一番深い場所、マリアナ海溝に潜っていったんだ(ちなみに、この海溝は、ハリー・ヘスが音響測深で発見した)。彼らは4時間弱かけて、水深10918メートル、つまり約11キロメートルまで潜った。その深さでは、1平方センチメートルあたり約1200キログラムの圧力がかかったんだけど、驚いたことに、底に着いた時、海底に住んでいるヒラメが驚いて逃げていったんだって。彼らは写真撮影装置を持っていなかったから、その時の様子を記録することはできなかった。

彼らは世界の最深部でたった20分間滞在して、水面に戻った。人間がその深さに到達したのは、その時だけなんだ。

40年以上経った今、なぜそれ以来、誰もそこに行っていないのかって疑問が湧いてくるよね。まず、再度の潜水は、海軍中将ハイマン・G・リッコーバーによって断固として反対されたんだ。彼は仕事熱心で、約束を守る人で、何よりも海軍の財政を握っていた。彼は水中探査は資源の無駄遣いだと考えて、海軍は研究機関ではないって指摘したんだ。それに、当時、アメリカは宇宙旅行に全力を注いでいて、人間を月に送ろうとしていた。だから、深海調査は重要ではなくなって、時代遅れになってしまったんだよね。でも、一番決定的な意見は、「トリエステ号」は大きな成果を上げていないっていうものだった。数年後にある海軍関係者が言ったように、「僕らができたってことを知っただけで、他に何も知らなかった。またやる意味ある?」結局、ヒラメを探す旅は遠くて、お金がかかるんだよね。今日もう一度やるとしたら、少なくとも1億ドルはかかるだろうって見積もられている。

水中研究者が海軍が約束した探査計画を実施する気がないって知った時、彼らは激しく抗議した。彼らの不満を鎮めるために、海軍はマサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所が管理する、より高度な潜水艇を建造する計画に資金を提供した。それは海洋学者のアリン・C・ヴァインを記念して「アルビン」号って名付けられた。それは操作が簡単な小型潜水艇になるはずだったんだけど、「トリエステ号」の深さには到底届かなかった。一つだけ問題があった。設計者は、それを作ってくれる人を見つけることができなかったんだ。ウィリアム・J・ブロードは彼の著書『水中の窓』でこう言っている。「海軍に潜水艦を製造しているゼネラル・ダイナミクスをはじめ、船舶局やリッコーバー将軍から見下されているプロジェクトを受けようとする大企業はなかった。」結局、信じられないことに、「アルビン」号は、ゼネラル・ミルズが傘下の朝食用シリアルを作る工場で作られたんだ。

水中には何があるのかっていうことについては、僕らはほとんど何も知らないんだよね。1950年代まで、海洋学者が目にすることができた最高の海図は、主に1929年以降の断片的な調査から得られた情報と、ちょっとした推測に基づいて描かれたものだった。アメリカ海軍は、峡谷を通過したり、平頂海山を避けたりするために、潜水艦を誘導するための優れた海図を持っていたけど、それをソ連の手に渡したくなかったから、情報を秘密にしていた。だから、学術関係者は、単純で古い海図を使わざるを得なかったり、期待を込めて推測したりしていた。今日でも、僕らが海底について知っていることは少ないんだ。もしあなたが一般的な望遠鏡で月を見たら、たくさんのクレーターを見つけるだろうね。フラカストロクレーターとか、ブランクレクレーターとか、ザッキークレーターとか、プランククレーターとか、月の科学者がよく知っているクレーターをね。もしそれらが僕らの海底にあったとしたら、僕らはそれについて何も知らないだろう。僕らが持っている火星の地図の方が、僕らが持っている海底の地図よりも優れているんだ。

海面での調査技術も、ちょっといい加減なところがあったんだ。1994年、太平洋で韓国の船が嵐に遭遇して、34000個のアイスホッケー用グローブが海に流れてしまった。バンクーバーからベトナムまで、海面に手袋が漂着したことで、海洋学者は今までよりも正確に、海流の方向を知ることができたんだ。

現在、「アルビン」号は40歳近くになっているけど、今でも世界で最も優れた研究船なんだ。マリアナ海溝の深さに近づくことができる潜水艇は、他にない。地球の表面の半分以上を占める「深海平原」に到達できるのは、「アルビン」号を含めて5隻しかない。普通の潜水艇の運用費は1日25000ドルもかかるから、気軽に海に潜ったり、何かにぶつかることを期待して、海の中をウロウロしたりすることはない。僕らの地球表面に対する直接的な経験は、まるで5人の男が夜中にトラクターを運転して行う探検に基づいているみたいなんだ。ロバート・クンツィヒは、人類は「海の暗闇の百万分の一、あるいは十億分の一、もしかしたらそれ以下しか調べていないかもしれない」って言ってる。

でも、海洋学者は一生懸命に、限られた資源の中でいくつかの重要な発見をした。その中には、20世紀で最も重要な生物学的発見の一つも含まれているんだ。1977年、「アルビン」号はガラパゴス諸島近くの深海熱水噴出孔の上や周りに、たくさんの大きな生物が生息しているのを発見したんだ。3メートルもあるゴカイとか、幅30センチメートルの二枚貝とか、たくさんのエビとかカニとか、ニョロニョロ動くチューブワームとかね。彼らはこれらの生物の存在は、熱水噴出孔から絶え間なく出てくる硫化水素、地上の生物には非常に有毒な化合物からエネルギーと栄養を得ている、大量の細菌のおかげだと考えたんだ。そこは太陽光も酸素も、生命に関わる他のものも一切ない世界だった。この生命システムの基礎は光合成ではなくて、化学合成なんだ。もし誰かがこんな突飛なことを考えついたとしても、生物学者はナンセンスだと考えるだろうね。

熱水噴出孔は大量の熱とエネルギーを放出しているんだ。約20個の噴出孔から出るエネルギーは、大規模な発電所と同等なんだ。周囲の温度変化も非常に大きい。噴出口の温度は400度にもなるけど、2メートル離れた場所では2、3度しかないこともあるんだ。彼らは「アルビンワーム」と呼ばれる軟体動物が、その境界に生息しているのを発見した。頭部の温度は、尾部の温度よりも78度も高かったんだ。以前は、複雑な生物は54度以上の水の中では生きられないと考えられていたのに、ここでは、その温度よりも高い水と、極めて冷たい水の中で同時に生きている軟体動物がいるんだよね。この発見は、生命に必要なものに対する僕らの認識を変えたんだ。

それは、海洋学の大きな謎、多くの人が知らない謎、海洋がなぜどんどん塩辛くならないのかっていう疑問にも答えたんだ。当たり前のことだけど、あえて言うまでもなく、海にはたくさんの塩があるんだ。この惑星の陸地を全部埋め尽くすことができるくらい、約150メートルの深さまで。何世紀も前から、川が鉱物を海に運び、その鉱物が海水中のイオンと結合して塩になることは知られていた。ここまでは問題ない。でも、不可解なのは、海水の塩分濃度が安定していることなんだ。毎日何百万ガロンもの淡水が海から蒸発して、塩分が全部残るから、論理的に考えると、年月とともに海水はどんどん塩辛くなっていくはずなのに、そうはなっていない。海から一定量の塩を取り除く何かが存在するはずで、その量が、増え続ける塩の量と等しい。長い間、誰もそれが何なのかわからなかったんだよね。

「アルビン」号による深海熱水噴出孔の発見が、その答えを与えてくれた。地球物理学者は、熱水噴出孔は魚の水槽のフィルターのような役割を果たしていることに気づいたんだ。水が地殻に流れ込むと、塩分が奪われて、最後に、きれいな水が煙突から噴き出してくる。このプロセスは速くないんだよね。海をきれいにするには約1000万年かかるけど、急がないんだったら、このプロセスは非常に効果的だ。

精神的に、僕らは深海から遠く離れている。海洋学者が1957年から1958年の国際地球観測年に行った主な目標が、おそらくそれを最もよく表していると思う。彼らは「海洋深部を利用して放射性廃棄物を捨てる」ことを研究しようとしたんだ。これは秘密の任務ではなくて、誇りを持って公に主張されたことなんだよ。実際には、あまり公にはされなかったけど、1957年から1958年まで、過去10年以上にわたって、放射性廃棄物を捨てる作業は、驚くほどの勢いで行われていたんだ。1946年以来、アメリカは250リットルの放射性廃棄物のドラム缶を、カリフォルニア沿岸から約50キロメートル離れたファラロン諸島に運び込み、海に投げ込んでいたんだ。

この作業は本当にいい加減に行われていて、ほとんどのドラム缶は、ガソリンスタンドの裏とか工場に置いてあるような、錆びついたドラム缶で、保護用の内張りなんて一切なかったんだ。もしドラム缶が沈まなかったら(それが普通だったんだけど)、海軍の射手が銃で穴だらけにして、海水を入れたんだ(もちろんプルトニウムとかウランとかストロンチウムもね)。1990年代に投棄が停止されるまでに、アメリカは海洋上の約50か所に数万個のドラム缶を投棄した。ファラロン諸島だけでも約5万個。でも、そんなことをしていたのはアメリカだけじゃなかった。熱心だった国には、ロシアとか日本とかニュージーランドとか、ほとんどすべてのヨーロッパの国があったんだ。

これが海洋生物にどんな影響を与えるのか。まあ、ほとんど影響がないといいんだけど、よくわからないんだよね。僕らは傲慢で、楽観的で、海洋生物について全く無知なことが信じられないくらいなんだ。僕らは海洋に住む最大の生物でさえ、信じられないほど知らないことが多いんだ。その中には、最大の動物であるシロナガスクジラも含まれる。この巨大な生物はとても大きくて、(デイビッド・アッテンボローの言葉を借りると)その「舌は象のように重く、心臓は車のように大きく、血管の中には泳げるほど大きいものもある」。それは地球上に存在した最大の動物で、最大の恐竜よりも大きい。でも、シロナガスクジラの生活は、僕らにとってほとんど謎なんだ。彼らがどこに行くのか、例えばどこで出産するのか、どこからそこに行くのか、僕らは長い間知らなかった。僕らが彼らについて知っていることは、ほとんど彼らの鳴き声を盗み聞きしたもので、それさえも謎なんだ。シロナガスクジラは時々、突然鳴き止んで、6か月後に同じ場所で鳴き始める。また、以前はどのシロナガスクジラも聞いたことがないような新しい鳴き声を出すこともあるけど、どのシロナガスクジラもそれを理解している。彼らがどうやってそれをやっているのか、なぜそうするのか、僕らには全くわからない。そして、これらの動物は呼吸のために水面に上がってこなければならないんだよね。

水面に上がる必要がない動物については、さらに不思議なことが多いかもしれない。有名なダイオウイカについて考えてみよう。シロナガスクジラほど大きくはないけど、間違いなく巨大な生物で、目はサッカーボールくらいの大きさで、触手は18メートルも伸びる。重さは約1トンもあり、地球上で最大の無脊椎動物だ。もしダイオウイカを小さなプールに入れたら、他のものを置く場所はほとんどないだろうね。でも、科学者、僕らが知る限りでは誰一人として、生きているダイオウイカを見たことがないんだ。何人かの動物学者は、生涯をかけて生きているダイオウイカを捕まえたり、見ようとしたけど、いつも失敗に終わっているんだ。僕らが知っているのは、彼らが浜辺に打ち上げられているからで、特にニュージーランドの南島では多いんだ。彼らはたくさんいるはずなんだ。なぜなら、彼らはマッコウクジラの主な食物だからで、マッコウクジラはたくさん食べるからね。

ある推定によると、海には最大3000万種類の動物が生息している可能性があって、そのほとんどはまだ発見されていない。1960年代になって初めて、トロール網が発明されたことで、深海の生物が本当に豊富であることに初めて気づいたんだ。それは海底とその近くの生物だけでなく、堆積物の下に埋まっている生物も捕獲できる掘削装置だった。水深約1.5キロメートルの場所で、ウッズホール海洋研究所の海洋学者ハワード・サンダーズとロバート・ヘスラーは、大陸棚を1時間トロールしただけで、25000匹の動物を捕獲した。その中には、軟体動物、ヒトデ、ナマコなどがいて、365種類もの生物が含まれていた。水深約5キロメートルの場所でも、約3700匹の動物を発見して、約200種類の生物が含まれていた。でも、トロール網は遅すぎるか、鈍すぎて逃げられないものしか捕獲できないんだ。1960年代末、海洋生物学者のジョン・アイザックスは、餌をつけたカメラを海に沈める方法を考え出して、さらに多くの動物を発見した。特に、ニョロニョロと動き回るヌタウナギとか、行ったり来たりするソコダラがたくさんいることを発見した。ある場所に急にたくさんの餌、例えば海底に沈んだクジラの死骸が現れると、最大390種類の海洋動物が食べにやってくることがわかったんだ。面白いことに、これらの動物の多くは、1600キロメートル以上離れた熱水噴出孔から来ていることがわかった。その中には、ほとんど移動しない二枚貝とかカニとかも含まれていた。現在では、ある生物の幼生が水中を漂流して、未知の化学的な理由で、餌を見つけると、そこに飛びつくんだと考えられている。

では、なぜ海はそんなに広いのに、僕らはそんなに簡単に海に負担をかけてしまっているんだろう。まず、世界の海はすべてが豊かなわけじゃないんだよね。海全体の1割程度しか、自然に豊かな海だとは考えられていない。ほとんどの水生動物は、暖かくて、明るい浅い場所にいるのが好きで、食物連鎖を育む豊富な有機物がある場所が好き。例えば、サンゴ礁は海洋空間の1%にも満たないけど、約25%の海洋魚類の生息地になっているんだ。

他の場所では、海はそんなに豊かじゃないんだ。オーストラリアを例にとると、この国は36735キロメートルの海岸線と2300万平方キロメートル以上の領海を持っていて、他のどの国よりも多くの波が海岸を打ち寄せている。でも、ティム・フラネリーが指摘したように、漁獲量の多い国の上位50か国にも入っていない。実際、オーストラリアは海産物の純輸入国なんだ。これは、オーストラリアの水の大部分が、オーストラリア自体の大半と同様に砂漠だからなんだよね。例外として、クイーンズランド近海にあるグレートバリアリーフは、非常に豊かな場所だ。土壌が貧弱なため、川から流れ込む水にはほとんど栄養が含まれていないんだ。

生命が豊かな海域でさえ、撹乱に対して非常に敏感なことが多い。1970年代、オーストラリアの漁師、小規模ではニュージーランドの漁師が、大陸棚の水深約800メートルの場所に、あまり知られていない魚がたくさんいるのを発見した。その魚はマダラっていうんだけど、美味しくて、たくさんいた。漁船はすぐに年間4万トンもの量で捕獲し始めた。そして、海洋生物学者はいくつかの驚くべき発見をした。マダラは寿命が非常に長くて、成熟が非常に遅いんだ。150年も生きるものもいて、僕らの食卓に並んでいるマダラは、ヴィクトリア女王の時代に生まれたものかもしれない。マダラがそんなにのんびりした生活を送っているのは、生息している水域に栄養が少ないからで、その水域では、一生に一度しか産卵しない魚もいるんだ。この魚は、あまりにも多くの撹乱に耐えられないことは明らかだった。残念なことに、理解した時には、資源量が大幅に減少してしまっていた。たとえ管理がうまくいったとしても、マダラが元の数に戻るには何十年もかかるし、戻れるかどうかはわからない。

でも、他の場所では、海洋の乱用は不注意というよりも、無謀としか言いようがない。多くの漁師がサメのヒレを「切る」んだ。つまり、サメのヒレを切り取って、サメを水中に投げ込む。そして、サメは死んでしまう。1998年、フカヒレは極東で1キログラム110ドル以上で売れて、フカヒレスープ1杯が東京で100ドルで売られた。世界自然保護基金は1994年に、毎年4000万匹から7000万匹のサメが殺されていると推定した。

1995年には、世界には約37000隻の工業規模の漁船に加えて、約100万隻の小型漁船があった。彼らが毎年海から捕獲する魚の量は、25年前の2倍だ。現在のトロール漁船は、巡洋艦のように大きいものもあって、後ろに引く網は大型旅客機を十数機も収容できるほど大きいんだ。偵察機を使って空から魚群を探すものさえある。

推定によると、トロール網で捕獲されたものの約4

Go Back Print Chapter