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えーっと、今回は、その、ギア・パーソナリティっていう話ですね。ギアって、ほら、車のギアみたいなもんで、自分のメンタルな状態をギアで例えてる、みたいな。
まあ、よく言うじゃないですか。「苦しい時こそ頑張れ」みたいな。まさに、それですよね。ギアを上げる、みたいな感覚。で、人によって、ギアの上がりやすさ、下がりやすさが違うって話なんです。
ある人は、ちょっとした刺激で、ポンってギアが上がる。すごい敏感な人。逆に、ある人は、よっぽど強い刺激がないと、ギアが上がらない。鈍感っていうか、どっしり構えてる人、みたいな。で、ほとんどの人は、その中間あたりにいる、っていうことらしいんですよ。
このギア・パーソナリティの違いが、例えば、不確実性に対する耐性とか、「ゾーンに入る」のが得意かどうかとか、同じ環境でも、ある人はイライラするけど、ある人は退屈する、みたいな、そういう違いに繋がるんだって。
投資銀行のトレーディングフロアが、いい例らしいんですけど、片方には、もう、画面に映る数字を冷静に見つめてるベテラントレーダーがいる。で、もう片方には、アルゴリズムのわずかなエラーとか、リスク計算の小数点以下のミスを心配してる数学者がいる、みたいな。二人ともギア2の状態なんだけど、そこに至るまでの刺激のレベルが全然違う、ってことですよね。
自分のギアをコントロールするためには、まず、自分がどの辺にいるのかを知るのが大事。刺激が多い環境が好きか、少ない環境が好きか?プレッシャーの中で働く方が力を発揮できるか?些細なことでストレスを感じやすいか?みたいな。
人は、基本的に、自分のギア・パーソナリティに合った環境に惹かれるんだって。もちろん、他の要因で、そうならないこともあるけど。医者を目指したけど、仕事と自分の性格が合わなくて辞めちゃう人とか、世界を変えるような製品を作ろうとしたけど、途中で挫折する人とか、そういうのって、ギア・パーソナリティとのミスマッチが原因かもしれない、ってことですよね。だから、自分のギア・パーソナリティを知っておくと、自分が一番力を発揮できる環境を見つけやすくなる、と。
で、ギア・パーソナリティには、大きく分けて二つのタイプがあるらしいんですよ。「スティッフ」なギアと「スプリンギー」なギア。
まず、「スティッフ」なギアっていうのは、プレッシャーが好きで、締め切りがないとやる気が出なくて、チャレンジに燃えるタイプ。ギア2に上げるのに、結構な力が必要で、一旦上げても、すぐにギア1に戻っちゃう、みたいな。
例として、PNCっていう、ウォール街の投資銀行で働くトレーダーの人が紹介されてますね。何百万ドルものお金を動かして、毎日、重要な決断をしてるんだけど、仕事のプレッシャーに全然動じないんだって。むしろ、昼食後に昼寝ができるくらい、リラックスしてる、みたいな。ヨガのヘッドスタンドを数日でマスターしようとしたり、安全が確保されてない状態で、富士山をスキーで滑り降りたりするらしいですよ。普通の人にとっては、すごく怖いことだけど、PNCにとっては、それがちょうどいい刺激なんだって。危険を楽しむんじゃなくて、危険をコントロールすることに喜びを感じる、みたいな。
あと、注意欠陥・多動性障害、いわゆるADHDの人の中には、常にギア1の状態から抜け出せない人がいるって話も出てきますね。「多動性」とか「刺激を求める」っていうのは、ギアを上げようとする現れなんだって。ADHDの人は、ギア2に入ると、集中力がすごく高まるらしくて、むしろ、ADHDじゃない人よりも集中できることもあるらしい。
狩猟採集時代のモデル実験によると、ADHDの人がいることで、集団が変化や困難を乗り越えられた可能性がある、って言われてますね。ADHDの人は、リスクを取って未知の世界を探求する。危機的な状況で、時間をかけて分析しない。もし集団全員がそういう性格だったら、常にリスクに晒されることになるけど、少数の人がそういう性格であれば、集団全体を危険から守ることができる、みたいな。現代社会では不利になることもあるけど、人類の存続には、重要な役割を果たしてるかもしれない、ってことですね。
ADHDの才能を活かして成功してる人もたくさんいるらしいですよ。ラグビーのチャンピオンとか、レオナルド・ダ・ヴィンチとか、リチャード・ブランソンとか、ジェイミー・オリバーとか、マイケル・フェルプスとか。
で、もう一つのタイプが、「スプリンギー」なギア。これは、ちょっとした刺激で、すぐにギアが上がっちゃうタイプ。ギア2を通り越して、ギア3まで上がっちゃうこともある。小さな音にも過剰に反応したり、メールの通知音を火災報知器みたいに感じたり、みたいな。で、一旦ギアが上がると、なかなか下がらない。だから、静かで穏やかな環境が好きなんだって。
ギア・パーソナリティは、過去の経験によって変わることもあるらしいですよ。兵士が、戦闘から帰還した後、しばらくは高い刺激を求めてしまうとか、田舎から都会に出てきた人が、騒音や人の多さに圧倒されるとか。
環境による変化は、徐々に起こることもある。周りの刺激に慣れてしまうと、自分でギアを上げることができなくなってしまう、みたいな。常に刺激がないと集中できなくなってしまう。だから、幼少期のスクリーンタイムが、ADHDの診断に繋がるっていう研究もあるらしい。
でも、大丈夫。ギア・パーソナリティは、変えることができる。注意力を鍛えることで、自分でギアをコントロールできるようになる。瞑想とか、集中力を高めるアプリとかも効果的らしいですよ。
自分のギア・パーソナリティが分かったら、次は、「パーソナル・アクセラレーター」を考えるのが大事。「パーソナル・アクセラレーター」っていうのは、自分のギアを過剰に上げてしまうもの。何にイライラするか?何を恐れているか?何が一番嫌か?みたいな。
例えば、BKっていう人が紹介されてますね。子供の頃、学校で集中できなくて、授業を邪魔したり、勉強を拒否したりしてた。でもある日、父親がたまたま難しい教科書を渡したところ、BKは、ものすごく集中して読み始めたんだって。それから、BKは、どんどん成績が上がって、学校でもトップレベルの生徒になった。BKは、強い刺激がないとギアが上がらないけど、一旦ギア2に入ると、ものすごい集中力を発揮するタイプ。でも、締め切りに追われたり、電車に乗り遅れそうになったりすると、すごく不安になるらしい。だから、BKにとっての「パーソナル・アクセラレーター」は、「時間制限」ってことになりますね。
で、BKは、IT企業で働いてるんだけど、締め切りに追われる不安を解消するために、整理整頓とか、秩序を重んじることを意識してるらしい。コントロールできることを増やすことで、不安を打ち消してる、みたいな。
人はそれぞれ、生まれつき持ってるものと、育った環境によって作られたものが組み合わさって、独自の反応パターンを持ってる。例えば、黒いゲレンデを平気で滑れる人が、子供の頃に落馬した経験から、馬に乗るのを極端に恐れるとか、騒がしいオフィスでも集中できる人が、自分の考え事に囚われてしまうとか。
もし、人間全員が同じギア・パーソナリティだったら、とっくに絶滅してたかもしれない。高い不確実性を好む人も、低い不確実性を好む人もいるからこそ、様々な課題を克服して、生き残ることができた、ってことですよね。危険な状況でも冷静さを保てる人がいたから、捕食者から身を守ることができたし、ゆっくりとしたペースで満足できる人がいたから、地味な植物の研究に没頭できた、みたいな。
で、世界がどんどん変化していく中で、ギア・パーソナリティが違う人が、それぞれ違った適応の仕方をする可能性がある。加速、不確実性、情報過多の世界で活躍できる人もいれば、そういう世界に耐えられない人もいる。
最後に、自分のギア・パーソナリティを、ざっくりと見積もる方法が紹介されてますね。静かで暗い部屋で、目を閉じて20分間、横になる、みたいな。食後すぐとか、眠い時間帯は避ける。カフェインも控える。
もし、すぐに寝てしまったら、スティッフなギアの可能性が高い。20分経っても、全然眠くならなかったら、スプリンギーなギアの可能性が高い。ほとんどの人は、20分くらいで眠くなるらしい。もしそうなら、中間くらいのタイプ。
正確な結果を得るためには、何日か試してみるのがいいらしいですよ。まあ、あくまで目安ですけどね。
はい、今回は、ギア・パーソナリティについてのお話でした。