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Calculating...

えーと、今日はね、ちょっとものの考え方を変えるっていうか、そんなお話をしてみたいなと思うんですよね。ソクラテス式問答法っていうの、聞いたことありますかね?

2009年にスタンフォード大学のビジネススクールの教授、ティナ・シーリグさんが書いた本の中にね、面白い実験の話が出てくるんですよ。彼女のクラスを14のチームに分けて、各チームに5ドルずつ渡して、2時間でできるだけ多くのお金を稼ぐっていう課題を出したんですって。で、最後に、それぞれのチームが、どんな方法で、どんな結果になったのか、短いプレゼンをするっていうルール。

大体のチームは、その5ドルを使って、何かを物々交換したりとか、まあ、普通に考えますよね。そういう方法だと、まあまあ、そこそこのお金にはなるんだけど。

ところが、いくつかのチームは、その5ドル自体を無視したんです。2時間で、どうやったら一番お金を稼げるのか、っていうことを、もっと違う視点で考えたんですよね。例えば、人気レストランの予約を取って、それを売ったり、キャンパスの中心で自転車のタイヤに空気を入れて、1回1ドルで稼いだり。こういうチームの方が、当然、最初の5ドルから考えると、リターンは大きいですよね。

で、一番すごかったチームは、やっぱりそのお金を無視したんだけど、全く違うアプローチをしたんです。彼らが気づいたのは、一番価値のあるものは、その5ドルとか、2時間っていう時間じゃなくて、スタンフォードの学生たちの前でプレゼンをする時間、その機会だってことに気づいたんです。で、その時間を、スタンフォードの学生をリクルートしたい企業に、なんと650ドルで売ったんですって!これ、すごいですよね。最初の5ドルから考えると、とんでもないリターンですよ。

つまり、負けちゃったチームは、普通の考え方で、普通の結果しか出せなかった。でも、勝ったチームは、違う考え方をしたってことなんです。

で、そこで出てくるのが、ソクラテス式問答法っていうもの。これはね、質問と答えを繰り返して、批判的思考を刺激して、隠れた前提とか、論理を明らかにするっていう方法なんです。

具体的にどうやるかっていうと、まず、ざっくりとした質問から始めるんです。「そもそも、何を解決したいのか?」とかね。結構、間違った問題を解決しようとして、時間とエネルギーを無駄にしてることって多いと思うんですよ。だから、まず、正しい問題を特定する。さっきのビジネススクールの例で言うと、「どうやって5ドルを使って、お金を稼ぐか?」じゃなくて、「与えられた時間で、どうやって一番お金を稼ぐか?」っていうのが、正しい問題だったわけです。

次に、自分が今考えていることを、提案してみるんです。「自分の仮説は何なのか?」「その考え方の根源はどこにあるのか?」って。

そして、質問を投げかけてみる。「なぜそう思うのか?」「その考え方は曖昧じゃないか?」「根拠は何なのか?」とかね。

さらに、前提を疑う。「なぜ、それが正しいと信じているのか?」「どうすればそれが正しいとわかるのか?」「もし間違っていたら、どうすればわかるのか?」って、徹底的に検証するんです。

証拠を評価する。「具体的な証拠はあるか?」「その証拠は信頼できるのか?」「隠れた証拠はないか?」って、掘り下げていく。

もし間違っていたらどうなるのか?を理解する。「すぐに修正できるのか?」「どれくらいの損害が出るのか?」常にリスクを把握しておくことが大切です。

そして、他の可能性を評価する。「他の考え方や視点はないか?」「なぜ、それらは優れているのか?」「なぜ、他の人はそれを正しいと信じているのか?」「自分は何を知らないのか?」色んな角度から見て、メリット、デメリットを洗い出す。

で、最後に、全体像を振り返る。「自分の最初の考え方はどうだったのか?」「それは正しかったのか?」「もし違っていたら、どこで間違えたのか?」「今回のことから、どんな教訓が得られるのか?」ビジネススクールの実験で言うと、正しい問題を特定するために質問を繰り返したことが、固定観念にとらわれずに、手持ちの資産を違う視点で見つめ、より創造的な解決策を見つけるきっかけになったんです。

ソクラテス式問答法は、時間がかかるから、簡単に修正できるような、重要度の低い意思決定には向いてないかもしれません。でも、ビジネスとかキャリアとか、人生において、大きなチャンスになりうる、ハイリスクハイリターンの決断をするときには、試してみる価値はあると思いますよ。きっと、今までとは違う考え方ができるようになって、アシンメトリーな、リスクに見合ったリターンを生み出す道を見つけられるはずです。

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